今日から父とともに生きる。

父の死後から45年、父との生活を11年間の短い間しか送ることのできなかった私は
残された父の日記を読み返しながら、
直接聞くことのなかった父の生き様や考え方を知り、
残された私の人生が少しでも豊かなものになるよう、父と共に生きようと思う。
(2006.2.14.by son)



2006年09月10日

戦地の兄への手紙(下書原稿より)

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拝啓 長らく御無音に打過誠に申し訳も御座居ません。
其後兄上様には如何ですか。私方家内一同健かにて農事に
勢出して居ります故何卒ご安心下さい。
近頃はもう水田の中耕にて一寸の暇もなく筆をすら握るを
得ません有様、此度認めしは雨天にてゆっくりと机に腰を
おろし懐しき兄上に差出すのであります。
どうか親しく御覧下さい。北鮮の山川草木も濃緑化し盛夏
の候も物語って居るでせう。

今般一ヶ年半の兵役を務められ、日出る此處に満期されし
大村兵田口福房君(外二名関戸、川中)は十九日の当日午
後一時十分三川内駅下車にて出迎へ村民ことごとく祝杯の
意を表した。我口ノ尾青年も前者の喜びを祝ふて開散した
のです。

はるかに望み察するに斬様な期節を程遠からずる内に展開
するを思へば本人外なる小生といへども身に余る心地す。
まして本人たるや筆舌に盡し難しは今更申すまでもない。
身心の鍛錬、規律心の養成、素質の向上を主眼とした軍隊
教育こそ実社会には大いに役立つのです。眞に人格を高め
國民的精神には秀でていると思います。最後の五分間です、
今です、努力しなければならないのも此の時です。
有終の美、これ実に我々青年のモットーとしなければなら
ない訓言なのだと思います。

農事の方は田植以後甘藷され、かれこれにて田植祝を七月
六日にして朗らかな一日を過し、其後、又全力をそゝいで
甘藍(中生)トマトの販賣。トマトは好成績にて石灰窒素
施用した所、発育激しく品種は早生種スパークスなれど
一個五・六十匁の果は珍しくなかったのです。
結実も百パーセントにて茎の丈夫なる事格別にて、青枯病
とては一本たりともこれなく、今日迄葉先青々として元気
旺盛です。しかりもう収穫末期をひかへています。
賣上収穫高は(一畝ばかりにて)十五円ですが未だ少しづ
つは収穫して居ります。今年は甘藍も早生は賣上高十二円
中生十五円でした。

西瓜、甜瓜、春胡瓜は梅雨の連続的降雨天にて不成績を来
しました。此の次は秋作にて我が農園を飾り、兄上満期の
折は見事なる農場と化するを夢見て居ります。
早蒔用として野崎白菜、美濃早生大根、法蓮草を十八日播
種(石灰窒素施用)しビーツ、秋菜豆、人参も同日播きま
した。秋胡瓜、秋トマトの畑も石灰窒素を打込整地して居
ります。トマト苗をも丈夫に太って居り、近い内に定植し
ようと思って居ります。胡瓜もこゝ十日以内に下種するつ
もりです。秋のえど菊を植へました。セルリーを今仮假植
して居り、近日中に定植し佐世保の市場に運びたいと思い
つい一生懸命に何やかれこれと勢力をだして何事も常に望
みと研究心のもとに農藝方面に注目し兄上が云ふていたや
うに何事も「一歩先に」の精神を忘れてはなりません。
農事の方は今日はこれくらいにして又次便にてくはしく。

終りに望んで今般青訓夏季行軍、期日は八月一日出發、四
日歸着予定。目的地唐津だそうです。小生もその一員たり
とて希望に満ち兄上達の形眞似でも出来るかなと思へば何
だか心強き感じがします。そして父母は殊は●にて兄上の
事を大へん喜んでおられますからどうか御安心の上しっか
りと御奉公なすって下さい。これが最後にのぞんでの僕の
一言です。ではこれにてさようなら

兄上様

※手紙の内容から察すると七月十九日以降八月一日以前に
書いたものと思われます。

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posted by gaku at 07:20| 長崎 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | 書簡原稿 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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